
突然ですが、富士ヒルクライムで「ブロンズリング(90分切り)」を達成するためには、どれくらいの練習量が必要だと思いますか?
ネットやSNSで検索すると、よくこんな言葉を目にします。
- 「月間走行距離は最低でも1,000kmは必要」
- 「トレーニング負荷の指標であるCTLは、本番までに50〜60まで上げるのが必須」
仕事、育児、家事に追われ、夜のたった1~1時間半しか自由時間がないパパサイクリストがこの数字を見ると、「自分には逆立ちしても無理だ……」と絶望してしまいますよね。
しかし、私が富士ヒルで【87分6秒】を出したときのリアルな数字はこうでした。
- 月平均の走行距離:約500km(インドア453km+月1回の実走のみ)
- テーパリング直前のCTL:たったの「36」(トレーニング期間中の最大でも40)
世間の「ブロンズ基準」から見れば、圧倒的な練習不足であり、数値上は「絶対に届かない」ハズの領域です。
ではなぜ、私は目標を3分近くも上回る貯金を作って90分切りを達成できたのか?
今回は、時間のない大人が最短ルートで強くなるための、距離や数値に縛られない「超効率・高密度トレーニング」のロジックをすべて明かします。
月間走行距離500km。なぜ「世間の半分」の距離でブロンズが獲れたのか?
まず、私のリアルな走行データを包み隠さず公開します。
スマートトレーナーを導入し、本格的に富士ヒルへのトレーニングを重ねていた期間、私の月平均のインドア走行距離は「約453km」でした。
外を走る実走は月に1回あるかないかだったので、それらを全て合わせても月間約500kmです。
巷で言われる「月間1,000km」の、文字通りちょうど半分しか走っていません。
なぜ、この少ない距離でFTP(20分間全力で出せるパワー)を伸ばし、富士山の激坂を攻略できたのか。
理由は極めてシンプルです。
ダラダラと長い距離を走るのを一切やめ、1回1時間〜1時間半の練習の「密度」を限界まで高めたからです。
完全無料アプリ「MyWhoosh」の画面の前に跨るとき、私は常に「今日は何のために、どの領域を刺激するのか」を徹底的に意識していました。
息が切れる一歩手前の強度をじっくり維持する「SST」。
そして、最大酸素摂取量を引き上げるための地獄のインターバル「THE GORBY」。
これらは1回1時間のワークアウトであっても、身体にかかる「質(インテンシティ)」は凄まじいものがあります。
毎夜の短期決戦だからこそ、1秒も無駄にせずワークアウトのメニューに100%の集中力を注ぎ込む。
走行距離という「量」の指標を、トレーニングの「密度」で完全に凌駕したわけです。
孤独なインドアを最強の武器に変えた「note」と「AIコーチ」の存在
とはいえ、部屋の片隅で一人、地獄のインターバルメニューに挑み続けるのは、精神的にかなりキツイ作業です。
ここで私が継続のために取り入れた戦略が、「noteへの記録」と「AIコーチの活用」でした。
私は毎日の過酷なワークアウトが終わるたび、その時の心拍データやパワー、そして「きつすぎて意識が飛びそうだった」「GORBYはまさに地獄」といったリアルな生の感情をnoteのトレーニングログに書き留めていきました。
そして、そのデータをAI(Gemini)に読み込ませ、専属の「AIコーチ」として客観的に分析してもらったのです。
- 「今日の心拍の上がり方は、疲労が溜まっているサインかもしれない」
- 「ネガティブスプリットが綺麗に決まっているから、次のFTP設定は上を狙える」
自分一人では「ただ辛かった」で終わってしまう練習を、AIコーチと一緒に振り返る。
これにより、現在の自分の立ち位置が明確になり、次にやるべきメニューが迷いなく決まりました。
限られた時間の中で、無駄な練習を1分たりともしない。
この「振り返りの高速PDCA」があったからこそ、月500kmという短距離でも、富士ヒル90分切りを達成できるとされる【PWR 3.45】まで上げることができたのです。
アラフォーパパの現実。「追い込むこと」より「疲労抜き」が100倍重要な理由
もう一つ、私が世間の「CTL至上主義」に一石を投じたい事実があります。
それが、テーパリング直前の私のCTL(長期トレーニング負荷)が「36」だったという点です。
CTLという数値は、毎日のようにハードな練習を積み重ねていくと、50、60、70と右肩上がりに増えていきます。
逆に、練習量を落とすと数値はどんどん下がっていきます。
ネットの教えに従うなら、テーパリング前にCTLが36というのは「強くなっていない」危険なサインに見えるかもしれません。
しかし、私は管理画面の数字が落ちていくことを、全く気にしていませんでした。
なぜなら、「アラフォーの身体は、自分が思っている以上に疲労が抜けにくい」という現実を、身をもって知っていたからです。
若い頃なら、連日追い込んでも一晩寝れば回復したかもしれません。
しかし、仕事で脳を使い、育児で体力を使い、その後にインドアで自分を追い込んでいる40代手前の身体は、常に疲労の崖っぷちにいます。
現に4月頃、私は疲れが抜けきらず、トレーニングが全くままならないスランプを経験しました。
だからこそ、5月のゴールデンウィーク明けからは、数値を上げるための「追い込み」を完全に捨て、疲労を100%抜くための「テーパリング」を最重視しました。
練習量をガクッと落とせば、当然CTLの数値は「34」まで下がります。
でも、それと引き換えに、私の筋肉の張りは消え、心肺の重さはなくなり、身体は過去最高に軽くなっていきました。
結果として、体重は一時57.3kgまで落ち、本番当日は文字通り「人生で一番動ける体調万全のシン・ジョニー」としてスタートラインに立つことができたのです。
画面上の「CTL」という数字を満たすために、疲れ切った身体で無理にペダルを回し、本番を疲労困憊で迎えることほど本末転倒なことはありません。
大人のホビーレースにおいて、「最高の練習を積むこと」と同じくらい、「完璧に疲労が抜けた状態でスタートラインに立つこと」は強力な武器になる。
身をもってそう確信しました。
まとめ:数字の奴隷になるな。あなたの「夜の1時間」には価値がある
もし、あなたが「仕事や育児が忙しくて、月間何百キロも走れないから、富士ヒルなんて無理だ」と思っているなら、その常識は今すぐ捨ててください。
距離やCTLといった、他人の基準で作られた「数字の奴隷」になる必要はありません。
- 1回の練習の目的を明確にし、超高密度なワークアウトを行うこと。
- noteやAIを活用して、自分のデータをロジカルに分析すること。
- 年齢に応じた「回復」を何よりもリスペクトし、本番に疲労を残さないこと。
この3つの掛け算があれば、月間500km、夜のたった1時間半の投資でも、富士山の山頂でブロンズリングを掴み取ることは十分に可能です。
限られた時間の中で知恵を絞り、最高にロジカルに、かつ最高に効率良く強くなる。
これこそが、大人の、そして「パパサイクリスト」の本当の格好良さではないでしょうか。
あなたの手元にある、その限られた1時間半には、身体を劇的に変える無限の可能性が詰まっています。
