ついに、この日がやってきました。
2024年夏に総額15万円の格安機材でロードバイクを再開し、2025年3月からスマートトレーナーを導入。
「夜の1時間半、完全無料のMyWhooshのみ」という制約の中で地獄のワークアウトを耐え抜いてきた私の、一つの集大成。
日本最高峰のヒルクライムレース、「Mt.富士ヒルクライム」に参戦してきました!
結論から言います。
初挑戦となった今回の富士ヒル、公式リザルトは【87分6秒】。
目標としていた「90分切り(ブロンズリング)」を3分近くも上回るタイムで、無事に目標を達成することができました!
アラフォーの普通のパパが、仕事と育児を両立しながらインドアトレーニングだけでどこまでいけるのか。
前日の受付から、当日の機材トラブル、そして運命のゴールの瞬間まで、熱量そのままにリアルなレースレポートをお届けします。
【前日】物欲のEXPOと、家族と過ごすいつもの夜
前日受付の朝、私は「今夜早く寝付けるように」と計算して、あえて早朝5時に起床しました。
神奈川の自宅を朝7時に出発し、山梨の富士急ハイランド第3駐車場に到着したのは9時半頃。
そこからは無料のシャトルバスで会場である富士北麓公園へ向かったのですが、このバスが豪華な観光バス仕様!
台数も多く、待ち時間ゼロで非常にスムーズに会場入りできました。運営の素晴らしさに、この時点で感動です。
会場の「富士ヒルEXPO」に一歩足を踏み入れると、最新の自転車からウェア、補給食まで、文字通り「ここに来れば富士ヒルに必要なものがすべて揃う」という噂通りの大賑わい。
しかし、見ていると強烈に物欲が刺激されます。
「これは精神衛生上よくない!」と判断し、受付を済ませて1時間程度でサッと会場を後にすることにしました。
受付自体は陸上競技場の室内レーンを使った一方通行で、スマホのQRコードを見せるだけで一瞬で完了。
5合目へ発送する荷物袋をもらい、自宅であらかじめパッキングしておいたバックパックをそのまま放り込んで集積場へ。
実に合理的でラクでした。
この日は当日移動を想定したシミュレーションを兼ねていたため、一緒に来てくれた家族と共に一度自宅へ帰宅。
いつも通りの夕飯を食べて過ごしました。
不思議と緊張は一切なく、胸にあるのは100%のワクワク感だけ。20時前にはベッドに入り、泥のように眠りにつきました。
【当日朝】暗闇の出発とお祭りの空気
ワクワクが止まらなかったせいか、予定より1時間も早い深夜2時に目が覚めました。
ゆっくり納豆ご飯を食べてエネルギーを補給し、午前4時すぎに車で自宅を出発。
本番までに2回の試走を行っており、その時も自分が走る「第5ウェーブ」の時間をイメージして行動していたため、タイムスケジュールは完璧でした。
しかし、5時半に現地に到着すると、試走時とは比較にならない圧倒的な人の数!「あぁ、ついに本番なんだ」と、当日独特のお祭りのような熱気を肌で感じ、テンションが跳ね上がります。
腹持ちの良いおはぎを一つ食べて入念にアップをこなし、6時半頃に駐車場を出発して待機所へ。
すでに第5スタートの列が形成されており、私は真ん中あたりに滑り込みました。
「目標にしていた公式のブロンズペーサーの後ろを狙うには、少し出遅れたか…?」と思いましたが、焦りはありません。相変わらず緊張はなく、モチベーションは最高潮。
天気は曇り、風は弱く、寒くも暑くもない。
これ以上ない絶好の「ブロンズ日和」のコンディションが整っていました。
【レース前半】無用の長物と化したカメラ、そして1合目の攻防
待機列からいよいよスタート地点へ移動。 ここで、今回のレースを動画に収めようとカメラを準備していたのですが、号砲が鳴った瞬間、思った以上に「ヌルっ」と集団がスタートしてしまい、焦って録画ボタンを押し損ねてしまいました……。
「嘘だろ、撮影できてない……!」
気づいた時には時すでに遅し。
チェストにマウントされたカメラと、ポケットのモバイルバッテリーは、一瞬にして単なる「重り」と化してしまいました。
頭の中で「おいおい、この重量のせいで90分を切れなかったら、一生悔やみきれないぞ…」という雑念がよぎりますが、すぐに気持ちを切り替えます。
パレードランを経て、スバルライン入口の交差点を左折。
いよいよ計測開始のライン(リアルスタート)を通過!
ここからはインドアで体に叩き込んできたペーシングの出番です。
計測開始手前からジワリとパワーを上げ、予定通り「190〜200W」のレンジで狙い通りに突入。
しかし、大集団の中では周りの加減速に巻き込まれ、一定のペースを刻むのが本当に難しい。
「周囲に惑わされるな。絶対にパワーを上げすぎるな」
そう自分に言い聞かせ、斜度のきつい1合目までは徹底的に抑えめに走りました。
今回は、公式の5kmごとの通過タイム表をトップチューブ(フレーム)に貼り付けて走っていたのですが、最初の5km地点での確認では、貯金どころか目標から「約30秒の遅れ」。
しかも、心拍数を見ると試走時の平均(165bpm)を大きく超える170bpm強をキープしている状態。「この心拍で、しかも30秒遅れ……やっぱりあの重り(カメラ)の重量が響いているのか!?」と一瞬冷や汗が流れます。
しかし、「ここで千切れたらブロンズはない」と腹をくくり、集団の中で脚の合う人を見つけては必死に食らいつきました。
苦しい展開でしたが、沿道の公式カメラマンを見つけたときは、まだ笑顔でピースサインを作る余裕が残っていました。
【レース中後半】魂を震わせる太鼓の音、そして冷静なネガティブスプリット
10km地点を通過。
タイム差は変わらず30秒ほどの遅れ。
大きく引き離されてはいない。
ここからは、何人かの背中を乗り換えるようにして、ブロンズペースと思わしき選手にうまくついていきます。
意識したのは、MyWhooshでの限界突破で培った「ネガティブスプリット」。
後半に向けて、わずかに、本当にわずかにパワーを上げていくイメージです。
これがピタリとはまり、15km地点を通過したときには、なんと30秒の遅れを完全に帳消しにし、タイムを巻き戻す(貯金を作る)ことに成功していました!
1週間前に試走を行っていたおかげで高地に身体が順応していたのか、過去2回の試走で苦しんだ3合目前後の「空気の薄さ」を全く感じません。
心拍数は相変わらず170pm強で高止まりしていましたが、苦しさは一定。
「このまま垂れなければ、絶対にブロンズにいける!」、確信が芽生え始めました。
途中で補給ジェルを口に含んだ際、うまく息継ぎができずに若干気悪くなったり、ダンシングをした拍子に右の前腿が攣りかけたりといったトラブルもありましたが、ペダリングに大きな影響が出るほどではありません。
脚の合う2人の後ろにピタリとつき、とにかく「垂れないこと」を徹底。
標高が上がるにつれ、先発していた前のウェーブの人たちを次々とパスできるようになり、モチベーションはさらに加速します。
さらに、先に出発していた上位グループの下山組が上から降りてきて、「がんばれ!」「あと少し!」と温かい応援の声をかけてくれました。
そして、4合目の大沢駐車場が近づいてきたその時、山霧の向こうからドンドコと響いてくる、あの有名な「太鼓の応援」が聞こえてきました。
「これだ……!」
霧で視界が真っ白に染まる中、お腹の底に響く太鼓の音が、限界を迎えつつあった私の魂を強烈に奮い立たせてくれました。
「ここで踏ん張らなきゃ男じゃない、ブロンズを獲るんだ!」と自分に激を飛ばします。
2回試走していたおかげで、視界不良の霧の中でもコースのレイアウトは全て頭に入っていました。完全にゾーンに入り、集中力は研ぎ澄まされます。
20km地点を通過。
タイムを確認すると、なんと約2分もの貯金を作れていました。
完璧なネガティブスプリットの証明です。 身体もまだ限界を迎えておらず、冷静にパワーをマネジメントしながら、奥庭駐車場を過ぎた平坦区間へ。
ここでも絶対に緩めず、前の走者のスリップストリームに潜り込んでスピードを極限まで乗せます。距離を爆速で稼ぎ、ついに最後の心臓破りの激坂へ。
この時点で、サイクルコンピューター(サイコン)のラップタイムは90分を確実に切っていることを示していました。でも、ここで安全運転で終わるつもりなんてサラサラありません。
「全部、ここに置いていく!!」
残ったすべてのエネルギーを振り絞り、なけなしの力でゴールスプリント! 心拍数はこの日最高の180bpmに達し、文字通り全てを出し切って、フィニッシュラインに飛び込みました。
【結果】霧の頂上で掴み取ったブロンズリング
フィニッシュラインを通過した瞬間、サイコンの画面に目をやりました。
表示されていたラップタイムは、【87分11秒】。
「やった……!!!」 思わず右手を突き上げ、全力のガッツポーズ。
その直後、込み上げてくる熱いものがありましたが、それ以上に凄まじい安堵感が押し寄せました。息は絶え絶え、意識は飛びそう。
なんとか落車しないようにバイクをコースの端に寄せ、身を横たえてしばらく荒い息を整えていました。
下山し、計測タグを返却して発表された正式な公式リザルトは、【87分6秒】。
念願の、念願の、ブロンズリング獲得です!
山頂は一面の雲で景色は何も見えませんでしたが、やりきった私の心は、これ以上ないほどにパッと晴れ渡る素晴らしい絶景が広がっていました。
周りを見渡すと、私と同じように目標を達成して泣いて喜んでいる人、あと一歩届かずに悔し涙を流している人……。
誰もがこの日のために、それぞれの日常の中で時間を捻出し、思いを馳せて努力してきたんだということが痛いほど伝わってきて、胸が熱くなりました。
自転車をやっていて、本当に良かった。
最後に:支えてくれた全ての人へ
2024年の夏、右も左も分からぬまま10万円の中華ロードバイクを買い、2025年3月にスマートトレーナーを導入した私。
夜遅くに部屋で汗だくになってトレーニングする時間を作ってくれ、身体のことを考えた栄養満点の料理を作ってサポートしてくれた家族。
昨年10月に「富士ヒルに挑戦したい」と大それた目標を打ち明けたとき、快く送り出してくれた妻と娘には、本当に感謝しかありません。
家族の理解と応援がなければ、このブロンズリングは絶対に私の手元にはありませんでした。
私の挑戦は、これで終わりではありません。
家族はすでに「次も応援するよ!」と背中を押してくれています。
無駄な脂肪を削ぎ落としたこの身体と、掴み取った自信を胸に、私はこれからもペダルを回し続けます。
次は、シルバーリングを目指して。