ついに富士ヒルクライムへの挑戦を終え、無事にブロンズリング(87分6秒)を獲得することができました。
富士ヒルは、国内外から約1万人が集まる日本最大のヒルクライムイベントです。
その規模の大きさゆえに、一般的な草レースとはルールもタイムスケジュールも全く異なります。
初めて参加する方は、
「クリック合戦ってそんなに激しいの?」
「前日受付はどう回ればいい?」
「当日のトイレや下山の防寒対策のリアルは?」
と、不安が尽きないはずです。
今回は、今年初参加した私が「元自転車店店員」の視点、そして「時間もコストと捉えるタイパ重視のパパ」の視点から、エントリー(0関門)から前日受付、当日の走行中の罠、そして下山・撤収にいたるまでの全タイムラインとリアルな気づきをすべて書き残します。
来年、初めて富士ヒルのスタートラインに立つあなたのための「完全バイブル」です。
【エントリー編】2月の「エントリー峠」と、1週間前の「発走順メール」のリアル
富士ヒルは、走る数ヶ月前の2月からすでに「エントリー峠」と呼ばれる戦いが始まっています。
① 一般エントリー(2月中旬)の必勝法
例年2月の上旬〜中旬にエントリーが開始されます。
2026年は2月13日(金)20:00からでした。
私は開始10分前からパソコンの前で待機。
激しいアクセス大渋滞(エントリー峠)を覚悟していましたが、手動更新(F5連打)などは一切せず、パソコン1台でじっと待った結果、約15分でエントリー画面に到達し無事完了しました。
通信の安定のため、スマホやモバイルルーターの回線ではなく自宅の固定回線(できれば有線LAN)で挑むのが鉄則です。
エントリー画面では、自分のプロフィールのほか、
「当日乗車予定のバイクメーカー、モデル名」
「駐車場の希望有無」
「目標タイム」
「希望スタート順」
などを細かく入力させられます。
直前で焦らないよう、事前にテキストにメモしておくなど想定しておくとスムーズです。
② 発走順確定メール(レース1週間前)と、試走からの逆算
発走順が記載されたメールが届くのは、レースのわずか1週間前とかなりギリギリです。
私は目標タイムを90分(ブロンズ)と設定し、第5ウェーブを希望したところ、希望通り「第5スタート(7:40〜8:10発走)」に確定。
同時に指定駐車場の場所も通知されました。
「自分のスタート時間が何時になるか」は、1週間前まで分かりません。
しかし私は、目標タイムから高確率で第5ウェーブ周辺になると予測し、3週間前と前週に行った計2回の「現地試走」の段階から、本番と全く同じスケジュールで動いていました。
具体的には「朝5時にスバルラインふもとに到着 → 軽く補給 → 6時からアップ → スタート1時間前の6時半にカフェインなしジェルを投入」。
この「本番のタイムスケジュールに身体を慣らしておく予行演習」が、当日の心の余裕に直結しました。
【前日編】土曜日の受付・EXPOと、下山荷物の「事前パッキング」
富士ヒルは、レース当日ではなく「前日受付が必須」です(2026年は6月6日土曜日が受付日、7日日曜日が本番)。
① 駐車場から会場へのアクセス
前日、私は10:00過ぎに無料開放されている「富士急ハイランド第3駐車場」に到着。
駐車場に入る際、係員に「富士ヒルの受付です」と伝えると、駐車料金が無料になるQRコードをくれます。
ここから会場の富士北麓公園までは無料のシャトルバスが大量に出ており、待ち時間ほぼゼロで快適に移動できました。
会場にはサイクルラックも大量にあるため自転車で向かうことも可能ですが、盗難対策の鍵は必須です。
② 受付の流れとEXPOの誘惑
受付自体は、メールのQRコードをスマホ画面で提示するだけで一瞬で完了します。
受付を済ませると、ゼッケンや計測チップと一緒に、「5合目までトラックで荷物を先送りしてもらうための専用袋」が渡されます。
私は、下山時に着る冬用防寒着をあらかじめバックパックに全て詰めた状態で会場に持ち込みました。
そのため、渡された専用袋にそのバックパックをスポッと入れるだけで荷物預け入れが完了。
受付会場でゴソゴソと荷物を漁る必要がありません。
下山荷物は、1週間前〜試走が終わった段階で完全にパッキングを終わらせておくこと。
これが前日のメンタルを安定させるコツです。
受付の後は、日本最大のヒルクライムEXPOを堪能できます。
有名メーカーのブースが並び、必要な消耗品やジェルは現地ですべて揃います。
トップモデルの試乗会なども盛大に行われていますが、私は物欲を刺激されすぎるのを防ぐため、1時間ほどでサクッと退散し、高速道路を使って1時間半ほどの自宅へ一度戻り、当日に備えて早めに就寝しました。
【当日編】大激混みのトイレ、待機列の並び方、そして走行中の3つのリアル
当日の朝、私は目覚ましと朝食の消化時間を考慮し、当日入りで早朝5時に指定駐車場へ到着しました。
① トイレは「会場に着く前」に絶対に済ませる
会場のトイレは噂通りの大激混みです。
私は途中の「道の駅富士吉田」で事前に済ませようとしましたが、朝5時台の時点で男子の大便器は長蛇の列。10分以上並びました。
非常時を除き、宿泊地や道中の離れた施設で限界まで絞り出しておくのがベストです。
② スタート待機列の並び順
駐車場から会場へは、サイクリストの波に乗っていけば迷わず着きます。
今年の午前中は曇りで過ごしやすかったですが、例年は雨が多く冷え込むため、待機中のレインウェアやウインドブレーカーは必須です。
ウェーブ内の「待機列」で少しでも前方に並びたい場合は、自分のスタート時刻の1時間前には会場(富士北麓公園)に到着しておくことをおすすめします。
私は30分前に到着したため、第5スタートのちょうど真ん中あたりからの発走となりました。
③ 【超重要】走行中に気づいた「試走と本番の3大違い」
いざスタート。1人でマイペースに上れた試走とは異なり、本番は強烈なドラマと罠がありました。
- 周囲に惑わされないペーシング スタート直後は周囲の勢いに呑まれ、ペーシングが非常に難しいです。しかし、序盤は「出しすぎるよりは、若干抑えめ」で走るのが正解。実際、私は序盤はブロンズペースより少し遅れていましたが、上るにつれて周囲がバラけ、脚の合う人が見つけやすくなりました。結果として、後半の綺麗なネガティブスプリット(後半型ペース)に繋がり、ブロンズを掴めました。
- 緩斜面でのドラフティング(風除け)の威力 スバルラインの後半にある緩斜面では、集団の後ろにつく「ドラフティング効果」を強烈に感じます。緩斜面に入る前に、必ず自分と「脚の合う(同じくらいのペースの)人」を見つけてパックを組んでください。これだけで数分単位のタイム短縮になります。また単独の場合でも、身体を小さくし、エアロフォームをとるだけでもパワー削減に効果があります。
- 下山組が引き起こす「対向車線の風圧」 第5ウェーブ以降のスタートになると、すでにゴールして下山してくる先行組の集団とすれ違うことになります。この下山集団がすれ違う時の風圧(対向車線からの風の壁)が、想像以上にこっちに吹き付けてきます。下山組が来たら無理に風に逆らわず、少しキープレフト(道路の左寄り)を意識して距離を取ることで、パワーを後半まで温存できます。
【下山・撤収編】10度以下の極寒対策、ご褒美うどん、そして最強の「有給ハック」
24kmを全力で上りきり、感動のゴール!……ですが、ここからが本当のサバイバルです。
① 5合目は10度以下の極寒。下山装備の正解
登頂直後は汗だくですが、5合目の気温は10度以下。
息を整えている瞬間に、一気に身体が芯から冷えていきます。
私は速攻で前日預けたバッグパックを受け取り、
「冬用インナー、冬用ジャケット、レッグウォーマー」
に着替え、さらに雨対策・防寒対策として
「上下セパレートタイプのレインウェア」
をその上から完全着用しました。
試走時よりも気温が低かったのですが、この「完全防備」のおかげで、少しも寒さを感じることなく快適にスバルラインを下ることができました。来年以降も、私は絶対にこのフル装備で下ります。
② 糖質を使い切った身体に染みる「吉田のうどん」
無事にふもとまで下山したら、完走証とブロンズリングを受け取り、すぐに会場の「吉田のうどん」交換所へ。
ゼッケンに無料引換券がついています。
スタッフの方々の手際がよく、大混雑にもかかわらず待つことなく受け取れました。ダイエットでずっと脂質を制限してきたサイクリストへのご褒美として、「揚げ玉かけ放題」という最高の開放感が待っています。
冷えた身体に染み渡るうどんは、最高の美味しさでした。
③ 最大のタイパハック:翌日の月曜日を「有給」にする
最後に、遠方から参加するパパたちへ、最もお伝えしたいタイパ(時間対効果)ハックです。
「大会翌日の月曜日は、絶対に有給を取っておけ」
富士ヒル終了後の日曜日、中央自動車道は激しい帰宅渋滞に加え、その他行楽などで疲労が溜まったドライバーによる事故が多発し、帰宅までに絶望的な時間がかかるのが毎年の恒例行事です。
せっかくブロンズを獲ったのに、大渋滞に巻き込まれてイライラしながら夜遅くに帰宅し、翌朝ヘロヘロで仕事に行く……これではコストパフォーマンスが悪すぎます。
私はあらかじめ月曜日を休みにし、レース後は山中湖近くのホテルへ直行して温泉とふかふかのベッドで最高の回復時間を過ごしました。
翌日の月曜日に渋滞のない快適な道路で余裕を持って帰宅する。
これこそが、大人の、そしてパパサイクリストの心と時間を守る最強の「コストマネジメント」です。
まとめ:富士ヒルは、準備とロジックの掛け算で100倍楽しくなる
クリック合戦の準備から、本番中の集団の風、そして下山後の有給のコントロールまで。
富士ヒルクライムというお祭りは、ただペダルを強く踏むだけでなく、「事前の準備とロジック」をどれだけ積み重ねられたかで、快適性と楽しさが100倍変わります。
初めての参加は誰だって緊張します。
でも、このタイムラインを頭に入れておけば、あなたはもう迷うことはありません。
来年、富士山のふもとで最高の輝きを放つリングを掲げるのは、この記事を読んでいるあなたです。